【孤独な生徒の命運は、入学して5日目にして決まる】

2005年4月13日。入学式の明けた次の日でしたが、それが高校生になってから最初の、昼休みが含まれる日程の日でした。私は、恐らく4月の初めから、高校では中学校までにはあった給食制度と授業中での席順を画然と分断して班割りをするルールが無くなり、教室内で思い思いに気の会う人と近しい位置に移って食事ができるようになることを意識に入れていたし、当日までに「昼休みを日に50分間ずつの、クラスメートとの雑談に興じつつ昼ごはんを食べるという、自分の存在が他者によって是認される機会としたい!!」という願望を胸中に充満させていました。 “【孤独な生徒の命運は、入学して5日目にして決まる】” の続きを読む

【最果ての地】

教室を後にした私は、手にあるチーズ蒸しパンをこの昼休みが終わるまでに食べつくさなければならない気がしていました。それは空腹のためでもあり、生まれてこの方十数年のあいだに染み付いた慣習のためでもあり、校舎内で誰にも見られずに食事をする大変さをまだ知らなかったためでもあります。中庭にはいくつもベンチが置いてありましたが、私はそのようなところで食事をするわけにはいきませんでした。 “【最果ての地】” の続きを読む

【20秒チャージ4時間キープ】

その明くる日にも、私は最果ての地区でアンパンを、そのまた明くる日には昆布おにぎりを、やはりろくに噛まずに味もなにもわからないままに喉の奥に押し込みました。すなわち私はだんだんに匂いの少ないものを昼食に選んでいたわけですが、イースト菌の香りも海苔の香りも、人に気づかれる恐れによって、私の鼻には普段の何十倍もの精度に検知されてしまっていて、残り香への恐れは消えることはありませんでした。 “【20秒チャージ4時間キープ】” の続きを読む

【孤独な生徒の教室への戻り方】

四時限目が終わるとすぐに一人教室から立ち去り、五時限目が始まる間際に舞い戻る立瀬マサキはどこで昼食をとっているのか?という議題についての1年4組内の関心は、日を追うごとに高まって行きました。
2005年5月17日には、すでに条件反射になりつつあることでしたが、私が昼休み終了間際に「自分には直前までの昼休みの過ごし方について何も恥じる所などない」と暗に主張するために、 “【孤独な生徒の教室への戻り方】” の続きを読む

【1/∞】

2005年6月4日に、私は一ヶ月強ぶりに購買を利用しました。その日は、教科と休み時間の垣根が取り払われて、一日中体育祭の準備のために当てられた日でした。教室の様子は、椅子を上に積んだ机が教壇側へ寄せられて床の作業スペースが開かれていて、そこにいる人数について言えば、体育祭の期間中三学年縦割りで連合を組んでいるので、上の学年の教室へ出し物のおみこしを作る手伝いに行っている人がいたり、中庭へ連合の巨大な看板を描く手伝いに行っている人がいたり、体育委員の人は競技に使う道具を作りに行っていたり、自分の出場する競技がある人はその練習をしに校庭へ出たりで、クラスメートは入れ替わり立ち代りし、教室内に留まっている人数はいつでも通常の半分くらいでした。その様相は、本来の昼休みに当たる時間になっても変わりませんでした。そうした状況を把握して、私は久しぶりに購買で食品を買って教室で食事をとることにしたのでした。
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【逆に聞くけど楽しんでると思う?!】

最初に速報が駆け巡ったのは、学級の半分の人数に対してだけであったわけですが、日にちが経って、波及はひそめく声に乗ってクラスのすみずみへと行き渡ってゆきました。
2005年6月5日には、視聴覚室で何かビデオ鑑賞の授業があり、授業が始まる間際の時間に、席順の都合で隣接した山浦秀男が、ふと私がそばにいることに気づいて、顔面を蔑視のありありと見える表情に変えて、
「人生楽しい?」
と問いかけてきました。 “【逆に聞くけど楽しんでると思う?!】” の続きを読む

孤独な生徒は昼休みの間じゅういたたまれない

【孤独な生徒は昼休みの間じゅういたたまれない】:INDEX

 

【「孤独な生徒は昼休みの間じゅういたたまれない」の説明】

【昼休みの教室からの去り方】

【司書さんにも知られたくなかった】

【本を読めない図書室】

【孤高の鬼才を演ずる】

【自分の分子を全て消したい時間】

【孤独な生徒のデスマーチ】

【孤独な生徒は後輩から職務質問をされる】

【図書室の三つの磁場】

【孤独な生徒は時々には教室にて狸寝入りをする】