焦燥感の表現:岩野泡鳴「放浪」からの引用{前編}

今回の書評は、引用文の素晴らしさによって長くなりましたので、前中後編に分けてお送りします。

書名:放浪
作者名:岩野泡鳴
年刊:1910年
装丁:集英社刊「日本文学全集43岩野泡鳴」
引用文のページ数&行数:p171ℓ31~p172ℓ15
引用文に至るあらすじ:主人公田村義雄(たむらよしお)は最近事業に失敗して無一文になりつつあり、家族に送金もできなくなってセンチメンタルな状態である。
そんな時に、日課として銭湯へ行き入湯をする。

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焦燥感の表現:「白隠禅師: 仏を求めて仏に迷い」からの引用

書名:白隠禅師: 仏を求めて仏に迷い
作者名:秋月龍珉さん
年刊:2013年
装丁:河出文庫版
引用文のページ数:p75~76

引用文に至るあらすじ:焦燥感の表現シリーズの前回の記事に出てきた、白隠禅師に関する資料を探っていたら、白隠禅師が自身のパニック障害の最中の身体感覚を表現した文章で、「夜船閑話」に引用されたのとは違うバージョンの物が、秋月龍珉さんの「白隠禅師: 仏を求めて仏に迷い」の中に引用されているのを見つけました。秋月さんが「夜船閑話」より後に書かれた白隠慧鶴の著作から引用したものと思われますが、出典が記されていなかったので、孫引きの形で引用したいと思います。引用するページは、作者さんが白隠禅師の経歴を解説したページです。

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焦燥感の表現:「夜船閑話(やせんかんな)」からの引用

書名:夜船閑話やせんかんな
作者名:白隠禅師
年刊:1757年

引用文に至るあらすじ:白隠禅師は、本名を白隠慧鶴(はくいん えかく)といい、1686年~1769年の江戸時代中期を生きた僧侶です。その著作である「夜船閑話」には、白隠禅師が若い頃に心理的な病を抱えてしまった時の生理体験の描写が含まれていて、その心理的な病とは後世から分析すればおそらくパニック障害であったと言われています。 “焦燥感の表現:「夜船閑話(やせんかんな)」からの引用” の続きを読む

焦燥感の表現:「パニック障害は治る」からの引用

書名:パニック障害は治る
作者名:渡部芳徳さん
装丁:単行本
年刊:2005年
引用文のページ数:p31~33

引用文に至るあらすじ:引用するページは、作者さんが、パニック障害の患者がパニック発作の最中に味わいがちな生理感覚の表現を箇条書きにして並べているページです。

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焦燥感の表現:「やせる石鹸」からの引用

書名:やせる石鹸
作者名:歌川たいじさん
装丁:単行本
年刊:2015年
引用文のページ数&行数:p89のℓ15~ℓ22

引用文に至るあらすじ:主人公の實は肥満な男子中学生。ダイエットをしようとランニングの習慣を始めたが、そのことがクラスメートに知られ、教室内で實のダイエットを嘲笑する内容のメモ書きが回覧されてしまう。

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焦燥感の表現:「蹴りたい背中」からの引用

書名:蹴りたい背中
作者名:綿矢りささん
装丁:ハードカバー版
年刊:2003年
引用文のページ数&行数:p135、ℓ10~15

引用文に至るあらすじ:主人公長谷川初実は、学校のクラス内でどのグループにも属せていない女子高生。もうすぐ夏休みが始まることに安堵しかけるが、同時に夏休みが終わった後の、より強い疎外感に思いを巡らせる。

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【孤独な生徒の命運は、入学して5日目にして決まる】

2005年4月13日。入学式の明けた次の日でしたが、それが高校生になってから最初の、昼休みが含まれる日程の日でした。私は、恐らく4月の初めから、高校では中学校までにはあった給食制度と授業中での席順を画然と分断して班割りをするルールが無くなり、教室内で思い思いに気の会う人と近しい位置に移って食事ができるようになることを意識に入れていたし、当日までに「昼休みを日に50分間ずつの、クラスメートとの雑談に興じつつ昼ごはんを食べるという、自分の存在が他者によって是認される機会としたい!!」という願望を胸中に充満させていました。 “【孤独な生徒の命運は、入学して5日目にして決まる】” の続きを読む