焦燥感の表現:「やせる石鹸」からの引用

Pocket

書名:やせる石鹸
作者名:歌川たいじさん
装丁:単行本
年刊:2015年
引用文のページ数&行数:p89のℓ15~ℓ22

引用文に至るあらすじ:主人公の實は肥満な男子中学生。ダイエットをしようとランニングの習慣を始めたが、そのことがクラスメートに知られ、教室内で實のダイエットを嘲笑する内容のメモ書きが回覧されてしまう。

引用本文:『メモは女子同士でやりとりされていたもので、實が走っている姿を誰かが見たらしく、「女にキモがられてやせようとナミダ目で走ってるデブ」みたいに嗤う内容だったの。
宇宙船から裸で放り出された人間がどうなるか知ってる?
まず、気圧の差のせいで体中の水分が沸騰するの。それから空間に熱を奪われていって、凍るの。永遠に。
メモを読んだ時の實は、まさにそんな状態だったわ。煮えたぎったあとに凍って、凍りついて、脳髄まで凍ってなにも考えられなくなったとき、心の中でなにかが爆発したの。それこそビッグバンみたいに。』

管理人のコメント:主人公は、最初に熱さを、その後に凍りつく冷たさを感じたと表現されています。熱さはメモ書きを広めた同級生への怒りで、冷たさは「嫌な噂が広まってしまった・・・。これからどうしよう・・・・。」という、不安であるのだと思います。

人が精神ダメージを受けた時の身体には、やはり冷感と熱感が混在するようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です