【B毒の汚染】 第六章~嵐の爪痕~ その5

Pocket

ここで説明の便宜上、過去を振り返って実際に伝播毒が定着してしまった部分の時期と経緯を年表にまとめたいと思います。

「右のふくらはぎの内側」/
定着時期:2009年1月
理由:時期は、最初の伝播のごく近くで、一月以内のことであったと記憶しています。前出の通り、その部分にかゆみを感じて、その頃は利き手の左手にも不潔感がある時期でしたが、「自分は利き手で身体を掻く権利をBに奪われてなどいない!!」と主張したくて必要以上に掻き毟ったところ疼き感が定着してしまいました。
「左のすねの前側」/
定着時期:2009年3月頃
理由:入浴して湯船から出た時、バスタブのエプロンとお湯を浴びて温まっていたすねの前側が触れた時に、その部分に冷たさを感じました。そうして、その物理的に冷たいという感覚が、その頃おなじみだった恐怖感による冷たさを連想してしまい、冷たさつながりで、B毒との因縁が結ばれてしまった気がしたのです。
「左のふくらはぎの内側、右のすねの前側」/
定着時期:2009年7月頃
理由:右のふくらはぎの内側と左のすねの前側に、疼き感が帯びるようになってから、しばらく経った時期でしたが、「右のふくらはぎの内側、左のふくらはぎの内側、左のすねの前側、右のすねの前側は、頭上から見ると、四角を描く位置関係になるな」ということをふと考えていて、その後刻に、「もし新たに左のふくらはぎの内側、右のすねの前側が伝播毒に染まったら、伝播毒が染みた箇所の四角関係が完成することになるな」という思考が浮かびました。二つ目の思考は、例えば、星型の穴が空いた板のそばに、星型の木切れが置いてあれば、「木切れをはめ込めば完全な板ができるな」と自動的に思い浮かぶといった、単純な見当識によるものです。その次の瞬間に現れた思考は「自ら、伝播毒を増やすことを計画するような発想をしてしまったっ!」という、Bに諾ってしまった如き悔しさと、今は健康である左のふくらはぎの内側、右のすねの前側の皮膚への申し訳なさでした。そのマイナスの感情が、左のふくらはぎの内側、右のすねの前側に、塗りこまれた気がして、皮肉なことに、それらの部分にまとめてケチがつき、伝播毒が定着してしまったのです。
「右のひじの一番尖っているところ」/
定着時期:2009年12月ごろ
理由:頬づえをついて(アゴづえではありません)本を読んでいるときに、急にBと同じ苗字を持つ登場人物が出てきて、その時圧迫されていたひじの先端に意識が集中してしまいました。

表から見て取れるように、ある皮膚に意識が集中してしまうきっかけは、本家毒の跡地と接点を持つことや、三年生を送る会を思い起こさせる記念品に触れることに限らないばかりか、「三年生を送る会」以前の約一年間の中学校生活と1年生から4年生までの小学校生活で、校舎内にて見聞したBの言動を思い起こさせる事物に触れることに限らないどころか、私の脳内を絶えず、ありとあらゆる芋づる式連想、縁起担ぎ、こじつけ、言いがかりが駆け巡ることによって、次々と皮膚にドライアイスが埋め込まれていったのでした。
また、皮膚とBのイメージとの関連付けが、深い度合いでなされたかどうかや、皮膚が候補に上がる際に圧迫感や掻爬など物理的なエネルギー加えられていたかどうかは、最終的に伝播毒が定着してしまう確率とは関係がなかったわけです。どんなに些細な発端によるケチのつき方でも、私は安心できませんでした。
むしろ、ケチのつき方が浅かった時こそ「こんな些細なことをきっかけに、伝播毒が定着したら、この先自分は、ますます些細なBからの因縁に悩むことになってしまう、なんとしても些細なことで気にし始めた部分のことは忘れなければ!!」という執着を生んでしまうパターンがあったと言えます。
年表からすると、新たに伝播毒の定着が起こる機会はそれほど頻繁ではなく、数ヶ月に一度だったわけですが、それは、余りにも頻繁に皮膚にケチがついたために、ある一箇所が定着状態になる前に、最新のケチがついた箇所に次々と意識が移っていったことが主な要因であったと思います。
同時期の私は常に、全身を冷ややかさに包まれ、着ている衣服が全て、伝播毒の張り付き感を薄めたような度合いでまとわりつくように感ぜられていました。皮膚という皮膚が、いつ不浄な記念品と接触するかということに一瞬一瞬おぞけふるっていたのです。
自分の表面のことから気を逸らしたくて、この当時の私の生活では、ゲームやインターネットに費やす時間がかなりの割合を占めていました。

ところで、毎日のどこかにインターネットを前にする時間があったのに、私は自分で強迫性障害の治療法を調べるのをためらっていました。
正確には覚えていないのですが、長谷部先生の初診を受けた当初に「曝露反応妨害法」という用語を検索して、強迫性障害のページに入り、そこで「強迫性障害は悪化するとうつ病を併発することがある」とか「統合失調症の初期症状に強迫観念がみられることがある」といった怖い記述を読んでしまったことがきっかけであったと思います。
したがって、私が精神医学の知識を得られるのは、ほとんど長谷部先生に何か尋ねた時のみとなっていました。

次の記事{第六章~嵐の爪痕~その6}へ進む→

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です