【B毒の汚染】 第一章~露出~ その3

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「三年生を送る会」が終盤に差し掛かった頃、合唱の企画がまとまって行われた頃であったと思いますが、Bが、飽きたということなのかさすがに可哀想になってきたということなのか、私のアゴに触りやめたことがありました。その替わりにBは、後ろの席のSを「チビ、チビ、チビ助」などと罵り始めました。どうして急にSを罵り始めたのか、SがBに何か口にしたために、Bの矛先がSに切り替わったということなのか、それとも、Bは以前からSに「チビ」と言っておちょくる定番を持っていて、私を侮辱対象にするのに飽きた今、Sを代用品に使ったということなのか、確言できる光景が私の記憶に残ってありません。この式の時間中に私からさんざん快楽を絞ったはずであるのに、BはSを罵る時にすごく殺気立った鋭い目をしていて、私はあらためてBの精神構造を奇怪に思いました。
全校生徒がパイプ椅子から起立して校歌を歌うという企画があったと思いますが、Bから受けたストレスで満身創痍の私に、Bは「たっちゃん、歌ってる?」と話しかけてきました。

♪いま~わかれのとき~ 飛び立とう~未来しんじて~はずむわかいちからしんじて このひろい~1

舞台に上がった一年生がはなむけの合唱をしていて、巨漢の先生が木製の指揮台に立って指揮をしていたのですが、その時 Bは「U(先生の名)の乗ってる台めきめき言ってね?」と、私に言うともなく言いました。そうして私は「うん、踏み抜いたら面白いのに・・・」とようやく答えました。私は、そんなことを本心から期待していなかったし、Bなどと会話をしたくありませんでしたが、Bの気分を私のアゴにさわる遊びを再開することからそらしたい思惑があって、心にもなく答えてしまったのでした。
合唱を終えた1年生が檀上から降りて列席に戻り、今度は2年生が舞台に上がるまでの間のことでしょうか、再び声を出しても不自然でない時間が訪れ、BはまたSを「チビ、チビ助」と罵倒し始めました。私は自分の身を縮こめる思いでいました。私は先に、座席を入れ替わってくれないOを恨みましたが、Bの目がSに向いているときには、私はこの状況のまま式が終わるのを願っていました。
「・・・ククククックックックッギャアハッハッハッハ」
Oの左隣には式の間じゅう一語も発さなかった者がおり、そのまた左にGという生徒がいました。Gは最初はうつむいてするみたく、低い声で笑い出して急に笑い声を高くしました。映画の悪役のよくする泣き笑いのようでした。それを受けて、この日までにGの人格もさほど信頼していなかった私は、まさかGはBを煽ろうってんじゃないよね?とおぞけふるいました。
「さっきからチョー面白いんだけど!!」とGが続けた一刻には私は、それはBがSをチビチビ言ってることを指すんだよね?と念じました。
「B、猫のはなしあきらめたのーっ!!?」
観客のいることを知って励みを得たBは「そーだよ!!たっちゃん、猫のはなし!!」またせがむ演技をして「オイ」「ウォーイ」「オォイ」と掛け声を上げて私への拷問行為を再開しました。
「ねこねこねこねこ」
Bはリズミカルに「ねこ」と一度言うたびに一回私のアゴに手を接触させるという技を放ってきました。
「ねぇ~猫のはなし!!立瀬!!猫のはなし!!」
このあたりで私は一度呼び捨てにされました。
Bの拷問が始まってからずっと、私は上半身全体を締め付けられる苦痛に耐えていましたが、このあたりの時間軸で、過呼吸というものでしょうか、みぞおちの下が悶えて、そこから急激に圧迫がせり上がりました。私は、この時に息を吸おうとして、肺が押し込められたせいなのか、思ったように息を吸えず、苦しくて反動のように上体を前に倒して、肺の中の息をすべて吐き出しました。この時、涸れたと思っていた涙が鉄砲水のように流れ出て制服の袖で顔を押さえました。
「たっちゃん・・・・かわいそう」
Bの侮辱行為の数々を一部始終見届けたSが隣席のIに言い、Iも「うん・・・」と返事しました。

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  1. 投稿者注釈:本文中の歌詞(♪いま~わかれのとき~ 飛び立とう~未来しんじて~はずむわかいちからしんじて このひろい~)は『「旅立ちの日に」作詞:小嶋登 作曲:坂本浩美』からの引用

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